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2018年12月25日

調査依頼、提訴、裁定委員について

まずは日本の競技規則から見ていきます。
競技規則24に調査依頼及び提訴についての記載があります。
調査依頼:
いつ:競技者に関する疑義が生じたとき
誰が:競技者及びチーム役員
誰に:競技責任者
どうやって:文書
回答:
いつ:可能な限り速やかに
誰が:競技責任者
誰に:調査依頼者
提訴:
いつ:調査依頼の回答が不服な場合、回答から15分以内に
誰が:競技者及びチーム役員(該当者でなくてもOK)
どこに:大会主催者
方法:文書
24.6後日成績に関することは10日以内に(この規則は日本独自。)

25には裁定委員会について述べています。
25.1 3名からなる裁定委員会を組織。提訴に裁定を下す。
25.2委員会の立場:大会組織外、委員会の議長はイベントアドバイザー、主催者の代表も参加可。裁定委員以外は投票権を持たない。
25.2 3人そろわなかった場合の規定。主催者が代理を指名する。
25.4裁定委員会の決定は最終

ガイドラインにある追加事項
25.1結果は公式掲示板に掲示しても良い。競技責任者は調査依頼の時間に制限を設けられる。
26 裁定委員会は主催者が指名、競技規則に熟知し、運営経験を有するものが望ましい。最低1名はイベントアドバイザ―が望ましい。経験、年齢、地域などのバランスを考慮して選出、事前に発表。利害関係者の場合は主催者が代理を指名。イベントアドバイザーは事情を聞き資料の提出を求めることができる。

IOFの規則を見ていきます。
27 complaint
特に違いはありませんが、提出先はオーガナイザーであって、競技責任者とはなっていません。
28 protest
これも大きな違いはありません。
29 Jury
29.2指名はIOFが行うか、連盟が行います。(主催者ではありません)
29.3ジュリーは3人または5人
29.4主催者はジュリーミーティングに参加できるが裁定時には退出する。
29.5主催者はジュリーの決定に従う
29.7利害相反によるジュリーの代理を指名するのはイベントアドバイザーである。利害相反に対する最終決定はイベントアドバイザーが行う。

30アピール
日本の規則には規定なし。ジュリーが集められなかった場合、またはジュリー解散後の場合に行われる。その対象はジュリーの決定であり、かつその会議の進行に大きな問題があった場合に限られる。提出できるのは連盟だけであり、カウンシルがそれを扱う。

ジュリーのガイドラインには以下の記載があります。
ジュリーは独立した組織であり、提訴に対しては規則をもってあたる。
調査依頼のない提訴はできない。
規則の解釈に当たってはスポーツの公正さが原則として使用される。
ジュリーはEAであることが望ましいし、IOFの主たるイベントではSEAが望ましい。
ジュリーは競技者、チームオフィシャルに渡されたすべての文書を受け取り、イベントのすべてのエリアに入ることを許される。
イベントアドバイザーはジュリーをすみやかに招集できる体制(電話番号を確認するなど)でいなければならない。
主催者はコンプレインとプロテストの用紙を会場に用意しておかなければならない。
イベントアドバイザーはジュリーがいつ会場につき、どこに集まり、いつ離れていいかを連絡する。
ジュリーはスタートやフィニッシュにいくことを求められる可能性がある。ジュリーはコンプレインの判断にかかわってはならない。
コンプレインへの回答は必要に応じてEAのアドバイスをもらいながら運営者がすべきである。ただし、提訴につながりそうな案件についてはその内容と回答を事前にジュリーに伝えられることはある。
投票権を持つジュリーは、審判や、役員のようにふるまってはならない。
ジュリー会議は静かな場所で行う。
イベントアドバイザーはプログラムと規則を準備する。
ジュリーは以下のような他の証拠を集めてよい。
地図や、文書の確認、競技者や係員への事情聴取、その場所への訪問、写真やビデオの確認、コンピュータその他からの出力内容
必要であれば、規則委員会によるアドバイスを受けることができる(規則委員会は会場にいなくても良い)。
結果は理由とともに提訴文書に記載される。ジュリーの同意があり、EAが必要と感じれば票数を提示できる。
判断に至る詳細は明らかにすべきでない。もし、ジュリーの判断に説明を求められる場合は1ルートに限る。EAがスポークスマンのようにふるまうか、必要ならジュリーメンバーにその仕事を託しても良い。ジュリー個人の考えは述べるべきでない。他のメンバーは裁定について競技者、委員、観客、メディアと議論してはいけない。

ざっとこんな記載があります。
違いは、
IOF規則ではオーガナイザーとなっているところの一部が日本の規則では競技委員長という役職になっていること。ジュリーの指定者が異なっていること。
日本の規則ではジュリーに運営経験している豊富なものとの記載があるがIOFにはない。
日本の規則にはジュリーのための準備や、ジュリーの具体的な行動の記載がない

以下は私の解釈もあり、若干主観がはいります。
IOFルールでは、判断にかかわる人はルールを知っていることが前提です。
コンプレインでは主催者がルールに基づいて判断を下します。主催者はある意味利害関係者でもあります。アドバイザーは主催者にアドバイスができます。間接的ですがこの段階ではアドバイザーは判断に影響を与える可能性があります。
プロテストでは利害関係のないジュリーがフラットな状況で判断に当たります。ジュリーには必要な情報を受ける権利と調査権があります。ジュリーの決定は最終でありそのプロセスに問題ない限りは覆りません。イベントアドバイザーは進行役、運営者は情報提供者であって判断に加わりません。回答の過程については公表されません。

訴える人にとっては、2回判断を仰ぐことができ、2回の判断者はお互いに独立しています。
そして、ジュリーでは一切の先入観、利害関係が排除されます。
(様々なバックグラウンドを持つ人で構成されるべきというのもそのためです。個人的には日本の規則で運営経験が豊富なものと規定することは運営側に有利な判断をするのではという疑義があるので、文面としては適切でないと思います。)
議論はジュリー内で行われるべきであり、EAはその議論に加わってはいけません。(独立性が阻害されるため。)

これがちゃんと働いていれば、内容が自分にとって不利で、納得がいかなくても受け入れはできるのではないかと思います。

また、調査依頼、提訴の提出者に気を付けてほしいことがあります。調査依頼という言葉が問題なのですが、基本的にコンプレインは自分の要求を示すもので、調べてくださいという形はとりません。具体的にどうしてほしいかを書いてください。受け入れるか、棄却するかを選べるような形での提出をお願いします。その結果は他の競技者に影響する可能性がありますので、提訴は調査依頼の提出者以外でもできます。
そして、不服がある場合は調査依頼の提出をためらう必要はありません。調査依頼、提訴はJOAに報告され、議論されるため、次の大会コントロールに役立ちます。お互いに面倒くさくはありますが、将来的に関連するみんなにプラスとなるのです。
posted by べん at 22:23| Comment(0) | 知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ちょっと説明を追加します

 調査依頼、提訴、裁定委員会については書き始めていますがその前に。

 前記事において規則について修正を躊躇してはいけないという部分が、規則を作りだすのを推奨していると思われるといけないのでコメントします。また、今回は説明記事でなくて、私の考えを述べる色が強いのでカテゴリはオピニオンで書きます。

 大会で問題が起きたからといっていちいち新しい具体的なルールを加えていくべきだという考えには私は明確に反対します。私が言っているのは、IOFのルールとの間に齟齬があって、それで運営者や裁定委員の判断に問題を生じるなら、IOF規則にそって変えることを躊躇してはいけないという意味です。(もっとも問題なのは26.1ですがそれ以外にも矛盾点はあります。)
 IOFの規則2.3では各国のルールはIOFのものをベースに書くことを推奨されています。もちろん日本の規則もそれに従ったうえで日本に合わせて変えているという意味では、規則に違反しているわけではありません。しかし、今回規則を検討するにあたり、日本のルールを全部読んで、更に国際ルールを読み、其の違いを意識して、EA研修会に臨むのはのはかなりの労力でした。例えば、IOFルールを基本とし、日本でどうしても対応できない部分は注釈で記載するというように規則を書き換えていただくのはダメなのでしょうか。そのほうが誰もが規則を読みやすくなりますし、選手にしてみれば国際大会への対応も容易になります。他のスポーツの規則をいくつか当たりましたが、そういった対応をしている競技が多いように思います。地図委員会がISOM2017に対してJSOMを作成せず、国内の対応を別掲したのは合理的で非常に良いことだと思います。
 
前置きが長くなりましたが、新しい問題に規則追加をもって対応するという考え方に反対するのは次の理由からです。
1.規則が多くなる。:多い規則を読むのは面倒で、みんなに規則を理解してほしいという考えに矛盾する。
2.独自の規則を加えることで、国際規則から乖離し、ガラパゴス化してしまう。
3.事象に対するルールはそのバリエーションに対応できず拡大解釈を生む。
4.裁定委委員の独自性を制限し、その存在価値を低下させる。(裁定委員会の役割については次回延べます)

 問題の事象が日本特有なものであれば別ですが、そうでない場合、規則を追加したいと考えるなら、日本の規則をいじるのではなく、IOFに規則追加を働きかけるべきだと思います。妥当なら議論し、受け入れてもらえるでしょうし、そうでなければそうしない理由を教えてくれるでしょう。
 
 次回記事については年内に頑張ってUPします。

posted by べん at 20:42| Comment(0) | オピニオン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月24日

イベントアドバイザーとは

イベントアドバイザーとは何でしょう。
うるさいことばっかり言って、運営に協力してくれない面倒くさい人?
これある意味当たってます。でもなんでそうしているかはちゃんと理由があります。

 前記事を読んでいただいていた方はお分かりでしょうが、彼らは別にうるさくしたくてしているわけではありません。それは、運営者も参加者もオリエンテーリングイベントを楽しむことができるようにしているのです。運営者の皆さんが規則を理解して運営していただければ、うるさく言うことも全くないし、イベントアドバイザーも実は楽なんです。

 競技規則27.1ではイベントアドバイザーはルールを知っていてかつ問題解決能力がある人である(その研修を受けている)ということを保証しています。27.2ではその主たる任務について競技規則が遵守されていることを確認することであると書かれています。またイベントアドバイザーに関する細則の6.1ではこれに公正に運営されていることを点検・確認するという文が加わっています。IOFの規則31.6では、大会で問題が起こることを未然に防ぎ、公正さを第一義にするという記載もあります。規則だけ守っているわけではありません。運営者のリスクを減らし、競技者に公正さを保証するために努力しているわけです。
 ワールドランキングイベントのガイドラインにおいては、イベントアドバイザの身分についてあくまで運営者の補助者であり、助言者であって、運営を担当するものではないと言っており、もっと直接的に、大会の警察官でもスパイでもないよと書いています。運営者と信頼関係と目的共有の意識をもって働き、運営者は、準備の進行や本質的な決断において常にアドバイザと連絡を取ることを求めています。運営者は、アドバイザから求められた情報はすべて開示しなければなりません。一方でアドバイザの働きはあくまで影のものであり、運営は主催者の意向で行われるべきで、ただ規則違反や大会の実施に危惧が感じられるときに介入するとしています。
またイベントアドバイザと運営者で論争になるときは理事会がその仲裁者となるシステムが出来上がっています。

 そういうわけで、イベントアドバイザは運営者が規則を理解し遵守する気持ちで接すればとても有用な存在です。よい大会にするという目的は一緒ですからよく連絡をとって仲良くやりましょう。
 運営者にお願いすることはブリテンの時期を守ってくださいということです。要項は2か月前、プログラムは1週間前が締め切りです。これはイベントアドバイザーの承認を受けるという意味ですから、イベントアドバイザーにチェックを受けるためには、遅くとも3か月前、2週間前をめどに概略が完成している必要があるでしょう。(ちなみにワールドランキングイベントのガイドラインでは要項締め切りは4か月前、プログラムは1週間前ですが2−3週間前が望ましいと書いてあります。)ブリテンが遅れれば、いくら良いアドバイスをもらっても運営者はその後の対応ができなくなります。余裕のないやりとりは関係の悪化につながります。もちろん重要な逸脱事項が生じそうな場合にはそれ以前に相談する必要があります。

イベントアドバイザの活動時期は細則6.2に記載があります。
・地図および大会運営の概要が固まった時期(6か月〜1年前)
・コース及びコントロール位置がほぼ確定した時期(2か月〜6か月前)
・大会前日および当日
上の2回は要項とプログラムを固める作業となります。
 しかし、公認大会に関する規則では現在公認申請は6か月前ですから最初のチェックの時期は大きく後ろ倒しされます。どれだけ困難な仕事になっているか理解できると思います。
ぎりぎりの申請では申請前に要項の概要ができていることが最低限必要です。当然2番目の仕事も後ろへずれます。
ここの記載は現状に即していないため、現実的で、かつイベントアドバイザーが対応可能な時期にずらして記載を変え、それを遵守していくべきであると考えます。具体的には最初の仕事が(3か月〜6か月前)2番目が(3週間〜2か月前)といったところでしょうか?
イベントアドバイザーの具体的なチェック内容は規則27.3にあります。規則7.2と10.2と見比べればイベントアドバイザーの仕事は要項、プログラムと密接にかかわりがあることがわかります。この時期に仕事ができなければイベントアドバイザーの業務は困難になります。
一方アドバイザはつねに影であることを意識してほしいです。意見はルールに基づいて、または失敗の危険性を説く形で行っていただきたいと思います。方法のアドバイスはしてればいいので、その方法は基本的に運営者の裁量とすべきなのです。

イベントアドバイザーについて少しは理解が深まりましたでしょうか?
イベントアドバイザーは裏方仕事です。仕事は長期かつ専門的で、多岐にわたります。そしてもちろんボランティアです。競技者のように結果を誇れるわけでもなく、運営者のようにやりたいことをできるわけでもなく、イベントの面白さを評価されるということもありません。一方で大会に問題があれば運営者とともに矢面に立つ存在です。
かれらの報酬はイベントがつつがなく終わり、オリエンテーリングという競技がこのあともつながっていくという事しかないのです。

是非かれらがその仕事を全うできるよう。運営の方々のご協力とご理解をお願いいたします。
posted by べん at 17:45| Comment(0) | 知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする